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DVD:告白(3) ~「大切な存在から理解されないということ」、「排他性と無理解性」~

 以前の記事までで、「あらすじ」「本作を森口悠子から観た場合」を述べたんだけど
 
今日は、「本作を渡辺修哉から観た場合」、そして、事件の素地であるクラスに流れていた「排他性と無理解性」について述べたい


ペタしてね


 渡辺修哉が、そもそもの発端である事件をなぜ起こしたのか

 ここで出てくるのが渡辺修哉のテーマ「大切な存在から理解されないということ」

 その原因はズバリ言って「母親の無理解」にある

 渡辺修哉の母親は、輝かしい自分の研究者人生を捨てて渡辺修哉を産んだ
 始めのうちこそ愛情を持って接していたのだろう、しかし、そのうち彼女は渡辺修哉に対して歪んだ愛情を向けるようになる
 
 彼女は、自分のキャリアを諦めさせたその原因を息子にあると考え、度々、渡辺修哉に当たる様になったのだ
 あげく、自分のコピーであるかのように渡辺修哉に「「優秀さ」がなければ愛するに値しない」というメッセージを発し続けてしまう
(母親が実際にどう思っていようとそれは渡辺修哉には関係ない)
 結局、見兼ねた父親が離婚を申し出て母親はそれを受諾
 彼女は名残惜しそうなそぶりを見せながらも颯爽と家を去っていくのだった、渡辺修哉に呪いの言葉を残して
「あなたは母さんの子だから優秀なのよ」

 この言葉に呪われて渡辺修哉は優秀さを周囲に見せつけ褒めてもらうことを執拗に求めるようになる
 全ては「優秀な自分が有名になって母親に見つけてもらうため」である
 母親の英才教育によって、通常の生徒以上の知識を持っていた彼は、その知識を活かして新聞に記事が載るほどの優秀賞を取り、「これで母親に見つけてもらえる」と期待する
 しかし、運悪く同時期に起こった同年代の学生による殺人事件によって渡辺修哉のニュースはかき消されてしまう
 渡辺修哉は思った
 「世の中、良いことをしても有名になんてなれないんだ。もっと悪いことじゃないと。そう殺人が良い、そうじゃないと母さんは見つけてなんてくれない」

 思春期の若者にありがちな短絡的な発想である
 だが、不幸なことに渡辺修哉には知識があり、それを活かすだけの場所も道具もあった
 きっと渡辺修哉はこの時点で、社会的動物である人間が越えてはいけない一線を越えてしまった
 京極堂の言う「向こう側」に行ってしまったのだ

 向こう側に行ってしまった渡辺修哉は「母親を振り向かせられると自分が考える行動をする」以外の要素にはとことん鈍感になる
 だから、殺人事件の犯人に自分がなりたいと願うし、他人を巻き込んでも何とも思わない、唯一の理解者だった北原美月も気まぐれに躊躇なく殺してしまう
 母親の無理解が、呪いの言葉が、渡辺修哉を誰も理解しようとしない存在に変えてしまったのだ
 

 だから、渡辺修哉の側から本作を見た場合、そのテーマは「大切な存在(母親)から理解されないということ」となると思う
 そもそもの事件の発端をひねりだせばそうなるのだから
 その上、その大切な存在は理解しようとしていないことに気づきもせず自分勝手な欲望だけ残して去っていくのだ
 「無理解がもたらした悲劇」とはまさにこのこと




 また、本作では「排他性と無理解性」に満ち満ちた生徒たちも執拗に描かれている
 この「排他性と無理解性」を利用して森口悠子は復讐を果たそうとも考えていたのだから当たり前だ

 さて、その生徒たちであるが、お世辞にも賢いとは言えない
 HIVだと聞けば接触感染や空気感染をしないと言われても過剰なまでに怯えて対象を避けるし、いじめも気軽に行ったりする
 彼らに足りないものは、知性であり経験であり思考であり寛容であり忍耐であり理解だ
 しかし、物語の他登場人物が平凡でどこにでもいそうなことを考えると、本作に置いてこの生徒たちが特殊な存在であるとは考えにくい
 と、いうことは、本作の生徒たちは作者の考える日本の平均的な生徒たちなのだ

 特に理由もなくいじめるし、殺人者であるということもいじめのための格好の理由づけでしかない

 「森口先生のことがかわいそうだと思わないの?」

 劇中である渡辺修哉をいじめていた生徒たちの一人が言ったセリフである
 彼女はこの言葉が持っているエゴに気づいているだろうか
 気づいていないだろう、彼女は、彼女たちは自分たちが「森口先生のためにいじめている」「これは正しいことだ」と信じて疑っているようには見えない
 そこには「皆と一緒に」いじめを行うという祝祭的ムードがあるだけだ

 渡辺修哉がなぜ殺人を行ったのか、HIVとはどういう病気なのか、殺人を行うようなものをいじめたら何が起こるのか、そんなことなど考えもしない
 排他性と無理解性、この二つが渡辺修哉を追い詰めていく

 
 物語の背景にスポットを当てると、そこにあるのは、異質なものを排除しようとする「排他性」と、外の世界に、他者に、興味を持とうとしない徹底した「無理解性」だと思った

 
 


 まとめると、本作は
 
 渡辺修哉が「大切な存在(=母親)に理解されないこと」により、優秀さにコンプレックスを持ってしまい、また、世の中の理不尽が遠因となって目的のために殺人を合理的と考える人間になってしまい、悲劇を起こす
 悲劇の当事者となった森口悠子が悲しみを与えた渡辺修哉(とついでに下村直樹)に報いをもたらそうと、手段を選ばず目的を達成する
(森口悠子も向こう側に行ってしまったのだ)
 そして、生徒たちは、最悪の状況を作り出すことに無自覚にその「排他性と無理解性」によって加担している


といった構成になっているかと思う
 
 



 最後に、ここまで自分がまとめてきて思った感想は

 「他者は理解できないものだ」っていう前提が共有されない社会はこうも悲劇を生みだすことがあるということ



 それと以下は余談だけど、

 森口悠子のぶれなさっぷりが最高だった
 「渡辺修哉と下村直樹に復讐する」
 この行動基準が全くぶれないんだもんなー

そして、最後の一言

「ここからあなたの真の構成の道が始まるのです…なーんてね」

その悪さ、たまんねー!!


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コメント

1. atたなか


はじめまして!
田中と申します。ブログ拝見させて
頂きました!
告白の感想についてなのですが、
なぜ渡辺しゅうやが秀才なことが
コンプレックスだと思ったのでしょうか?
私はそうは感じなかったので
是非聞かせてください^^
そして最後の
森口の なんてね に
その悪さたまんねーな!!ていう感想、
同感です!!!!!!

  1. 2012/01/19(木) 11:17:32 |
  2. URL |
  3. 田中千穂 #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

2. Re:atたなか


>田中千穂さん
はじめまして!
質問の答えですが、「渡辺修哉が秀才なこと」がコンプレックスだったのではなく、渡辺修哉は「母親に認められるような秀才(勉強とは限りません。秀でていれば何でも良いのです)でなければいけないこと」がコンプレックスだったと書いたつもりなのですが。

渡辺修哉にとっては
「優秀であること→母親に認められること」
が一番だったのです。
しかも母親に去られているのでこの式は強化され絶対的なものになります。
そこで「優秀であること」の定義が「社会的に認知されることなら何でもいい」になってしまった為に悲劇が起きたと考えています。

長くなってしまってすいません。
僕はそう思いましたが田中さんがどう思われたかが気になります
  1. 2012/01/19(木) 13:24:19 |
  2. URL |
  3. wakkyhr #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

3. Re:Re:atたなか


>wakkyhrさん
なるほど!そういうことだったのですね!理解しました^^
丁寧なご返答ありがとうございます**

私は、最初は渡辺修哉は”世間から注目を集めたい”だけなのかと思っていました。(ルナシーのくだりがそう思わせたのかな)どんどん話が進むと”母親に認められたい”という真実が見えてきたのでウェルテルの見当違いな発言にびっくりしました(笑)

個人的には森口の復讐にはかなりスカっとしました・・・。
  1. 2012/01/19(木) 15:02:55 |
  2. URL |
  3. 株式会社アットウェル #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

4. Re:Re:Re:atたなか


>株式会社アットウェルさん

表現が拙くてすいません。。

ウェルテルはカワイソウな人でしたね。あそこまで裏目るのも珍しい。
まあ鈍感すぎるのも毒なのでしょうが 笑

僕も森口の復讐は爽快でした。
あそこまでやりきってくれるとイイですね!

そういえば同じ復讐ものを最近読みました。
荻原浩「コールドゲーム」という作品です。
こちらはいじめられっ子がいじめっ子に復讐していくという話なのですが、最後が中途半端だったのが残念でした。。
告白とは違い、救いはあるのですけどね。

作品としてはどうも読者におもねっている印象を受けてしまいました。

関係ありませんでしたね…笑
長々と失礼しました。
  1. 2012/01/19(木) 19:58:36 |
  2. URL |
  3. wakkyhr #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

5. atたなか


>wakkyhrさん
とんでもございません><
私の理解が不足していました~><

コールドゲーム
少し調べてみました!
面白そうですね!機会があったら
(もう少し余裕ができたら)みてみます!!

少しでもお話できて嬉しかったです^^
よろしければ私が会社でやっている
アメブロもご覧ください。
暇つぶし位にはなると思います(笑)
  1. 2012/01/20(金) 16:20:17 |
  2. URL |
  3. 株式会社アットウェル #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

6. Re:atたなか


>株式会社アットウェルさん

ブログ観ました!
映画、色々見てますね。
僕のオススメは「銀河ヒッチハイクガイド」です!B級映画の傑作と言われているこの作品。下らないのにそのクオリティの高さには驚きます。
シュールなのが好きであれば是非!

  1. 2012/01/21(土) 01:16:41 |
  2. URL |
  3. wakkyhr #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

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